土地分類基本調査(地形分類図ベクトルタイル)について
激甚化する自然災害に備える山地部の地形情報の提供について
2017(平成29)年7月の九州北部豪雨では、山地部の中小河川で土石流の発生により甚大な被害が発生しました。この災害後に、内閣府が主催する検討会において、水害への理解を促し避難に関する取組を促進するため、山地部の中小河川で水害の危険性が高い地域について、地形情報等を活用した情報提供を推進することになりました。
これを受け、全国を広範囲で整備している土地分類基本調査(地形分類図)を使用して、2018(平成30)年12月には5万分1地形分類図の画像データ(合計916面)を公開しました。
さらに2021(令和3)年6月に、この画像データをGISデータ化して、画面上でマウスをクリックするとその場所の地形の特徴(土地の成り立ち)と自然災害リスクを確認できるベクトルタイル形式の地形分類図データを新たに公開しました。
地形の特徴(土地の成り立ち)と自然災害リスク
土地分類基本調査に基づく5万分1地形分類図は、1954(昭和29)年から2008(平成20)年の半世紀以上にわたって作成され、時代によって地形分類の解釈が異なっていたこと、また地域単位(多くは県レベル)で最適化された地形分類の凡例が整理されていたことから、通算すると合計約18,500にのぼる地形分類の凡例項目が存在していました。利用者の便宜を図るため、国土地理院は、有識者による地形情報整備検討会(委員長:平井幸弘駒澤大学教授)を設置して、全国統一で凡例を整理する考え方、地形種ごとの自然災害リスクの検討を実施し、約18,500の凡例を小分類として33分類に整理するとともに、分類ごとに地形の特徴(土地の成り立ち)と地形から見た自然災害リスクを確認しました(下表)。
なお、凡例項目が異なる分類にまたがり、整理が困難な凡例については「地形混在」として表現しています。
配色 大分類 中分類 小分類 地形の特徴(土地の成り立ち) 地形から見た自然災害リスク 山地・丘陵 山地・丘陵 山地・丘陵 尾根や谷からなる周囲より高い土地や、傾斜の急な土地。 斜面沿い・山麓・谷底では大雨による落石、崩壊、落盤、陥没、土石流などの恐れがあります。 火山 火山斜面 火山活動でできた山地。火口やその周囲の斜面、流れ出て堆積した溶岩を含む。 大雨による崖崩れや土石流、泥流、地すべりに注意が必要です。 火山麓扇状地 火山を刻む谷から広がる扇状地。土石流による堆積物や火山の噴出物を多く含む。 大雨による土石流、泥流や河川の氾濫に注意が必要です。 集動地形 崖錐・崩壊地・地すべり地 落石によってできた斜面や、斜面の崩壊、地すべりによってできた土地。 斜面沿いでは大雨による落石や崩壊に特に注意が必要です。地すべり地では大雨・雪解けで地すべりが再滑動することがあります。 土石流地 土石流によって運ばれた土砂や岩石などが堆積してできた地形。急な傾斜の扇状地を含む。 大雨による土石流に特に注意が必要です。河川沿いは氾濫にも注意が必要です。 地形混在 落石によってできた斜面、斜面の崩壊や、土石流、地すべりによってできた土地。 斜面沿いでは大雨による落石や崩壊、谷沿いでは大雨による土石流に特に注意が必要です。地すべり地では大雨・雪解けで地すべりが再滑動することがあります。 地形混在 地形混在 尾根や谷からなる周囲より高い土地や、傾斜の急な土地。火山活動、落石、斜面の崩壊、土石流、地すべりによってできた土地や石灰岩が雨水により溶けてできた土地。 斜面沿いでは大雨による崩壊、谷沿いでは大雨による土石流に特に注意が必要です。また、氾濫にも注意が必要です。 台地・段丘 台地・段丘 段丘 河川、海(湖)沿いの低地よりも高い位置にある平坦地。低地との間に急な斜面を挟む。 河川との比高が小さい土地では大雨による浸水の恐れがあり、斜面沿いでは大雨による落石や崩壊、地すべりの恐れがあります。平坦地のうち、周囲と比べてやや低い土地では大雨の際には周囲から水が集まりやすく、浸水に注意が必要です。 台地上の浅い谷 台地・段丘の平坦地のうち、周囲と比べてやや低い土地。小規模な水の流れによる侵食や、かつての流路跡が埋められるなどしてできる。 大雨の際には周囲から水が集まりやすく、浸水に注意が必要です。 段丘崖 段丘崖・段丘斜面 台地・段丘の縁にある急な斜面。 大雨による落石や崩壊、地すべりに特に注意が必要です。 低地 扇状地 扇状地 谷口からの河川の氾濫によって、平地に向かって土砂や礫などが堆積してできた土地。 大雨による氾濫、浸水、土石流、土砂・洪水氾濫に注意が必要です。 低地の一般面 谷底平野・氾濫平野 山間地や台地などの間を流れる河川沿いにあって幅の狭い低地。また、河川の氾濫により土砂などが堆積してできた広く開けた平坦な低地。主に砂や礫、泥などからなることが多い。 大雨による河川の氾濫に特に注意が必要です。山地内の斜面沿いでは大雨による落石や崩壊、土石流に注意が必要です。また低地では、河川への排水不良による氾濫や浸水にも注意が必要です。 海岸平野・三角州・砂州間低地 河口から海(湖)に向けて砂や泥が堆積した平坦な低地など、海(湖)岸沿いの平坦な低地。 大雨による浸水、高潮による浸水、湛水の長期化に特に注意が必要です。 地形混在 谷口からの河川の氾濫によって、平地に向かって礫が堆積してできた土地や、河川の氾濫によってできた平坦な低地や、河口から海(湖)に向けて砂や泥が堆積してできた平坦な低地。 大雨による浸水や土砂・洪水氾濫、海岸沿いでは高潮による浸水に特に注意が必要で、斜面沿いでは大雨による落石や崩壊、土石流にも注意が必要です。 低地の微高地 自然堤防 河川沿いの低地のうち、周囲よりもやや高い土地。主に河川が越水した地点に砂が堆積してできる。 規模の大きな氾濫での浸水に注意が必要です。 砂丘 風によって運ばれて砂が堆積してできた、周囲よりもやや高い土地。過去に形成されたものも含む。 縁辺部や低い土地では大雨や高波、高潮による浸水の恐れがあります。 砂州・浜堤 海(湖)岸沿いの低地のうち、波によって砂や礫が堆積してできた、周囲よりもやや高い土地。過去に形成されたものも含む。 高波や高潮、波浪による浸水に注意が必要です。 地形混在 主に河川が越水した地点に砂が堆積してできた河川沿いの低地のうち、周囲よりもやや高い土地や波や風によって砂や礫が堆積してできた、海(湖)岸沿いのやや高い土地。 河川沿いでは規模の大きな氾濫での浸水に注意が必要です。海岸沿いでは大雨や高波、高潮、波浪による浸水の恐れがあります。 低地の微低地 後背湿地 河川沿いの低地や海(湖)岸沿いの低地のうち、周囲よりもやや低い土地。主に泥が堆積していることが多い。 周囲より低いため、大雨による浸水、湛水の長期化や土砂・洪水氾濫の発生に特に注意が必要です。海岸沿いでは高波、高潮による浸水、湛水の長期化に特に注意が必要です。 旧河道 かつての河川の流路で、周囲よりもやや低い土地。流路の移動によって河川から切り離された部分が、砂や泥で埋められてできる。 大雨や氾濫による浸水、湛水の長期化や土砂・洪水氾濫の発生に特に注意が必要です。 頻水地形 河原・河川敷 河川堤防に挟まれた河川側の区間や、川べりに砂や礫が堆積したところ。 大雨による増水で冠水し、湛水が長期化しやすいことや土砂・洪水氾濫の発生に特に注意が必要です。 干潟 潮汐により海(湖)水に覆われたり露出したりするほとんど水平な土地。緩く堆積した砂や泥からなる。 潮汐による冠水に注意が必要です。 浜・磯・隠顕岩・岩礁 波打ち際のうち、砂や礫、岩などが露出した土地。 潮汐、高波や高潮による冠水に注意が必要です。 天井川 天井川 周囲の低地より河床が高い河川。人工的な河川堤防が築かれることで、固定された河床に土砂が堆積してできる。 堤防が決壊すると氾濫流が一気に拡がるため注意が必要です。また、大雨による斜面の崩壊や土砂・洪水氾濫の恐れもあります。 地形混在 地形混在 河川の氾濫や、河口から海(湖)に向けて砂や泥が堆積した土地。 大雨による浸水や斜面の崩壊、土砂・洪水氾濫に注意が必要です。また、海岸沿いでは大雨や高波、高潮、波浪による浸水の恐れがあります。 人工地形 人工改変地 切土地 人工的に山地や台地などの斜面を切取って造成した平坦地や斜面。 斜面沿いは大雨による落石や崩壊に注意が必要です。 盛土地 人工的に谷や低地に土などを盛って造成した平坦地や斜面。 大雨による地盤変形、盛土滑り、不同沈下などに注意が必要です。 埋立地 海(湖)や池などに土砂を投入して陸地とした土地。 土地の高さが十分でない場合は高波や高潮による浸水に特に注意が必要です。 干拓地 海(湖)や池などを堤防で締め切って排水して、新たに陸地とした土地。一般に海(湖)水面より低い。 大雨や高波、高潮による浸水、湛水の長期化に特に注意が必要です。 地形混在 人工的に斜面などを切取ったり、谷や低地、海(湖)や池などに土を盛ったりして造成した平坦地や斜面。また、海(湖)や池などを堤防で締め切って排水して、新たに陸地とした土地。 斜面沿いは大雨による落石や崩壊、低い土地では大雨や高波、高潮による浸水、湛水の長期化に特に注意が必要です。 水部 水部 水部 海や湖沼、河川などの水面。 (災害リスク評価対象外) 崖 崖 崖 極めて急な斜面。 大雨による落石や崩壊、地すべりに特に注意が必要です。 地形混在 地形混在 地形混在 (複数の地形が混在) (複数の地形が混在するため、評価できず)
ご利用上の注意
1.ここで示している自然災害リスクは洪水・土砂災害における災害リスクを示しています。また、地形分類項目ごとの一般的なリスクを表示しており、個別の場所のリスクを示しているものではありません。
2.土地分類基本調査(地形分類図ベクトルタイル)は、1954(昭和29)年から2008(平成20)年までに行われた「土地分類基本調査」で作られた地形分類図(縮尺5万分1)を元に作成しました。
3.作成された図の年代と地形分類の凡例の違いにより、図の境界(「図郭線」と言います)で地形分類が変わってくる箇所があります。
4.全国の主要平野を対象とする地域では、より詳細なスケールで地形を分類したデータ(25000レベル)を整備しています。詳しくは「地形分類(自然地形)」をご覧ください。